クラブ帰りの朝。始発の電車に乗って、家へと帰ってくる。自分の部屋に入り、一息ついて、いつも思うことがある。「頭が、洋服が、タバコくさい…」。Tシャツなんかは汗でビショビショ、さらに汗くさい。さっきまでのフロアでの盛り上がりの楽しさから一変、なんともいえない不快な気分になる。
クラブで楽しんだ後には誰もが経験する憂鬱な朝の一シーンだろう。僕もこんな朝を何十回、いや何百回迎えたことだろう。僕はいつも長時間踊り続けるので、帰宅したときにはもう体はクタクタ。とても、シャワーを浴びる元気は残っていないので、その後、目が覚めてからお風呂に入る。当然、朝に寝て、夕方、目が覚める。そうすると再び、あの不快感。タバコくさくて、汗くさい。起きて、まずすることは、Tシャツを手洗いすること。タバコのにおいは、いくら押し洗いしても、なかなかとれない。いつも、格闘である。このとき、いつも「毎回、こんなこと…、何とかならないものか」と思いながら、Tシャツと、タバコのにおいと格闘している。
今年の秋冬も、かっこいい、かわいい、素敵な洋服が街中のウィンドゥに並んでいる。本当にここ数年のファッションの進化には目を見張るものがある。僕もお気に入りのファッションアイテムを何着か購入したばかり。せっかく買ったんだから、本当はこのようなお気に入りの洋服を着て、お気に入りのパーティに行って、フロアで踊りまくりたい。しかし、現実的にそれはできない。お気に入りの洋服をタバコくさくはできない。毎回、クリーニングに出すわけにもいかないし。それが少し、悲しい。
先日、「THINKING EVOLUTIONアンケート」を、「ヴェルファーレ」の協力で、5つの大バコで開催された、ハウス、テクノ、トランス、プログレッシヴハウスなどの8つの有名パーティで実施した。そこでパーティに来ていた100人を超えるクラヴァーたちから生の声を聞くことができた。
「クラブにおいての不満や問題点は?」という質問で、最も多かった答えが「タバコくさい!」「フロアは禁煙にするべき!」「空調悪すぎ!」といった声だった。男女ほぼ均等の回答を得たが、男女ともそういう回答が多かった。「21世紀のクラブシーンはどうあるべき?」との質問には、「きれいなクラブ」「清潔なハコ」といった答えが最も多く返ってきた。その後、僕の周りの数十人の友人たちに同じような質問をしてみたところ、タバコを吸う人たちでさえ、「クラブに行くとタバコくさくてイヤだ」「朝、うちに帰って来ると、タバコのくささが気になる」と言っていた。タバコを吸わない僕だけが過剰に気になるのかと思っていたら、そうではないらしい。タバコを吸う人たちでさえ、気になっているいうことは意外だった。
実は最近、Tシャツやキャミソール、ジーンズにスニーカーという、単に踊りやすい格好でクラブに行くのはつまらないという声をよく耳にするようになった。もう少し、おしゃれをしたい、ファッションで目立ちたいという欲求がクラヴァーたちにわいてきているようだ(かくいう僕も、そのうちの一人だが…)。やはり、今のタバコくさくなってしまうクラブの状況では、おしゃれな服装をして遊びに行くことは難しいだろう。
21世紀のクラブの進化の課題の一つに、タバコ対策、要するに強力な空調システムの導入が不可欠であると思う。アンダーグラウンドで、ダーティーなイメージだったクラブはもうすでに過去のものとなっているのである。このようなユーザー(クラヴァー)のニーズを供給側(クラブ側)は読み取って、対応していくべきだろうと思う。それがさらなるクラブシーンの拡大につながるのだから。もし、空調システムが良く、タバコくさくならないクラブがあれば、今までクラブに遊びに来なかった新しい層の人たちもクラブに通うようになるだろう。僕自身、そのようなクラブがあれば、常連になってしまうこと間違いなしと思うのだが…!