本誌「FLOOR-net」の前々号に掲載した、この「THINKING EVOLUTION」連載第31回「クラブの通いすぎで「突発性難聴」に…!?」が思いのほか、大きな反響を呼んでいる。実際、僕のまわりの、毎週のようにクラブに通っている友達たちもその連載を読んで「おれの友達でも難聴になっちゃったやついるよ!」とか、「私のまわりでも耳鳴りで悩んでいる友人が何人もいるよ!」という話を僕にしてきてくれた。前回の連載第32回の「THINKING EVOLUTION」では、「世界最高のサウンドシステムをつくるスティーヴ・ダッシュ」と題して、ロンドンの「HOME」、リヴァプールの「CREAM」、そして昨年、惜しまれつつもクローズしてしまった世界最高のサウンドシステムを有していたニューヨークの「TWILO」など、世界のほとんどの超有名クラブのサウンドシステムを手がけてきたスティーヴ・ダッシュが来日したのに伴い、インタビューを行い、掲載した。その中でも、彼は、クラブの通いすぎによる「突発性難聴」は日本だけでなく、全世界で問題になっていると語っていた。さらに、前号の本誌「FLOOR-net」を読んでいて驚いたのだが、毎号、この「THINKING EVOLUTION」とともに連載されているDJ 19さんの「Sound Chaser」の中で、DJ 19さんも耳鳴りに悩んでいたそうで、前々号の「THINKING EVOLUTION」を読んで、病院に行って、難聴の検査を受けてきたと書かれていた。その結果、耳に異常はなかったということなので、誌面を借りて「よかったですね」とお伝えしたい。
おそらく、音楽による難聴の問題は、今に始まったことではなく、それこそ昔のディスコの時代からあったのだと思う。ただ、それを活字にするメディアがなかっただけだろうと思う。実際、僕も昔から、ディスコの店員をしていた人たちが、耳が悪くなって仕事を辞めたという話をよく聞いていた。クラブやディスコの「突発性難聴」の問題を活字にできる雑誌は本誌「FLOOR-net」しか日本には存在しないのだ。音楽情報誌はたくさんあっても、クラブカルチャーを扱う雑誌は他にはないといっていい。
さて…、耳に対して本誌読者が非常に関心を持っていることがわかったので、今月は、耳に対して、非常に身近な問題をもう一つ、取り上げてみたいと思う。そう、ヘッドフォンの問題である。
本誌読者は無類の音楽好きであると思う。自宅のみならず、電車の中や歩きながら、移動中にカセットやCD、MDをヘッドフォンで聴いている人たちだろうと思う。クラブの大音量とはケタが違うが、実は、ふだん、何気なくつけているヘッドフォンでも、耳に対する負担は少なからず、かかっている。特に、イヤー・レシーバー(カナル式)と呼ばれる、耳の中に入れ込むタイプのヘッドフォンは、骨に振動が直接、伝わり、耳に対する負担は重いといわれている。おそらく、本誌読者の中には、DJをしている人や、DJを目指している人、クラブミュージックをつくっている人、クラブミュージックを良い音で聴きたいと思っている人が多いはずだから、多くの人たちは、そのようなイヤー・レシーバー・タイプではなく、耳をイヤーカップで覆う、いわゆる通常のヘッドフォンや、最近、主流になっている耳に引っ掛けるタイプのものを使っていることだろう。ヘッドフォンもふだん、何気なく使っていると、なるべく、クラブのあの大音量の臨場感に近づけたいと思うのだろうか、自分の好きな曲などはボリュームをどんどん上げたくなってくる。また、地下鉄などに乗っていると、音がうるさいため、自然にボリュームを上げていってしまい、耳に負担をかけているのである。その積み重ねが「突発性難聴」の引き金になりかねないともいえない。
最近、僕は、ものすごく素晴らしいヘッドフォンに出会った。このヘッドフォンは今までのさまざまな問題をすべて解決し、“心のやすらぎ”という何ものにもかえられないものを与えてくれた。それは、「Quiet Comfort」(クワイエット・コンフォート)という「BOSE」が開発した、最新鋭のスーパー・テクノロジーを凝縮させた、究極のヘッドフォンだ。前述したように、地下鉄や街の騒音など、日常、生活している中で、ヘッドフォンで音楽を楽しもうとしても、それらの雑音のため、音楽のボリュームを上げてしまいがちである。そのような雑音をいっさい消してしまう、究極のヘッドフォンが「クワイエット・コンフォート」である。爆音の中で仕事をしなければならないアメリカ空軍のパイロットや、F1のレーサーなどが実際に使用しているというから、その品質は確かなものだ。その仕組みは、ヘッドフォン「クワイエット・コンフォート」の中心に装備されたマイクがイヤーカップ内のすべての音をモニターし、聴こうとしている音(音楽などの入力信号)と比較し、その差を騒音(ノイズ信号)として認識。それと正反対の位相を持つアンチ・ノイズ信号をつくり出し、聴こうとしている音楽などの信号といっしょにイヤーカップ内のスピーカーに送る。ノイズ信号とアンチ・ノイズ信号はお互いに打ち消し合い、耳には聴こうとしている音だけが伝わる。このプロセスを高速で繰り返し、変化するノイズに対応する。
実際、最近、僕もこの「クワイエット・コンフォート」を購入し、毎日のようにつけているのだが、この快適さといったら言葉では表現しようがないほど、素晴らしい。スイッチを入れた瞬間、世界は静寂に包まれる。そして、自分のお気に入りの音楽だけが、実にクリアに聴こえてくる。しかも、今まで、ふつうのヘッドフォンでは聴こえなかった数々の音までが聴こえてくるではないか! クラブのあの大音量で聴くのとはまた別の快感と、新しい音の発見がある。そして、スイッチを切った瞬間、世の中は、こんなにもうるさくて、不快だったのかと落胆する。できることなら、ずっと、この「クワイエット・コンフォート」をつけていたいと思う…。
この「クワイエット・コンフォート」を実際に使って、感動したことがいくつかある。まず、電車の中で熟睡できるようになったこと。まわりの雑音がないから、実に、快適に眠れてしまう。最初、寝過ごしてしまわないかとちょっと心配したが、信じられないことに、この「クワイエット・コンフォート」、電車内の車内放送の声だけはちゃんと聴こえるのだ。おそらく、その音域だけは聴こえるように設計されているのであろう。さらに驚いたことに、救急車や消防車、パトカーなどの緊急車両のサイレンの音なども、ちゃんと聴こえるのである。すごい技術! 自宅のテレビのボリュームは今までふつうにレベル「15」くらいで聴いていたのだが、「クワイエット・コンフォート」を使ってから「10」で十分聴こえるようになった。ヘッドフォンのボリュームを上げなくなったので、耳への負担が減り、耳の聴力が回復してきたと思われる。
この「クワイエット・コンフォート」、商品としては、主に飛行機に乗ることが多いビジネスマンなどに対して、その騒音に対するストレスを低減させるために開発されたもので、長時間つけていても全く問題はない。実際、さまざまな実験の結果、「クワイエット・コンフォート」をつけて飛行機に乗ると、時差ボケが軽減されるといったデータが出始めている。
おそらく、クラブでDJをするときなど、モニター用のヘッドフォンとしてもこの「クワイエット・コンフォート」は最適ではないかと思う。39,800円と、ヘッドフォンにしては高めだが、耳のことを考えると、この「クワイエット・コンフォート」は、実におすすめの一品である。
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