第34回
タバコを吸ったら罰金2,000円!


本誌「FLOOR-net」の読者のタバコの喫煙率はどれぐらいだろうか。本誌の読者のほとんどはふだんクラブに通っている人たちだろうと思う。クラブでのタバコの喫煙率をみると本誌読者の喫煙率もだいたい想像することができる。おそらくその率はかなり高いものだろう。そんなタバコの喫煙者の方々には“耳の痛い”社会の流れになってきたようだ。
2002年10月、東京都千代田区で「生活環境条例」が施行された。これは、千代田区内の路上で、歩きながらタバコを吸ってはいけないという条例で、違反した場合は2,000円の罰金となる厳しいもの。千代田区は、皇居を中心とした、JR中央線の四ツ谷、市ヶ谷、飯田橋、水道橋、御茶ノ水、神田、東京、そしてJR山手線の秋葉原、有楽町などの駅の内側に位置する区。本誌読者にとっては、秋葉原あたりが馴染みがある場所かもしれない。さらに、地下鉄の麹町駅、半蔵門駅周辺では、歩きタバコのみならず、路上で立ち止まってタバコを吸っているだけでも違法となる。今、千代田区内には、菊川怜がサッカーの審判のユニフォームを着て、「レッドカード」を持って、「マナーからルールへ」と書かれたポスターが、いたるところに貼られており、区民のみならず、千代田区を利用するすべての人たちに対して、「生活環境条例」を訴えている。施行は10月からだが、実際に取り締まりを始めたのは11月から。12月までの1カ月間で800人を超える人たちが、違法ということで罰金を支払った。
千代田区内には4人1組の係員が5班体制で区内を見回っている。1班4人のうち、区の職員が2人、警備会社が2人。実際に会ってみるとわかるのだが、この人たちがけっこうコワい。1班に1人は必ず、体格がよく、角刈り風で、威圧感のある、見るからにコワい系の係員がいる。おそらく、大きなトラブルにならないように、ちゃんとこのような人たちを入れているのであろう。このような人たちに注意されたら、「ごめんなさい」という感じだろうと思う。歩きタバコや路上でのタバコの喫煙を注意された場合、その場で2,000円を支払うか、振込用紙を受け取って、期日中に支払わなければならない。あるテレビのニュース番組で、千代田区内の駅前で、若い女性が歩きながらタバコを吸っていて係員に注意され、その女性はおもむろに大きな財布をバッグから取り出し、「2,000円払えばいいんだろッ!」と言い放って、2,000円を道路に投げ捨てた、結構、ショッキングな映像が日本全国に流れ、話題となっていた。
もともと、なぜ、千代田区でこれだけ厳しい条例がつくられたのか。千代田区内には他に類を見ないほど多くの出版社などが集中している。みなさんもご存知のように、出版社で働いている人たち、編集者という人たちは、職業がら、喫煙率がとても高い。当然、外で道を歩きながらも、ふつうにタバコを吸っている。実際、僕自身、ふだんは千代田区内の出版社にいるので、そのような事実はずっと体験してきている。とにかく、歩きながらタバコを吸っている人たちの数が他の地域に比べて圧倒的に多かった。
そんな中、大きな問題が多数発生していたのだ。タバコを吸って手を下に降ろしたときの位置というのが、ちょうど子どもの背の高さぐらいになる。歩きタバコをしている人のそばを通った子どもに、タバコで火傷をさせてしまうという事件が多数発生してしまっていたのだ。また、歩きタバコをしている人がはいた煙を後ろにいた子どもが吸ってしまい、喘息の発作が起こってしまったりという苦情が次々と千代田区に寄せられ、区議会でも多く取り上げられるようになった。こうした結果、2002年10月、ついに「生活環境条例」が施行されたわけだ。千代田区のこの「生活環境条例」は日本全国に大きな衝撃を与えている。すでに、東京都町田市が2003年4月からの施行を決めたのをはじめ、東京都の小金井市や杉並区、また福岡市なども同じような、またはもっと厳しい条例を準備している。本誌読者のみなさんがよく利用する渋谷区や新宿区、港区などはまだ検討中とのことなので、すぐにこのような条例が施行されることはなさそうだ。
不景気なこの時代、20代の若者の喫煙率は年々上昇しているそうだ。それはクラブでの状況をみればすぐにわかる。特に、女のコの喫煙率の高さには驚かされる。タバコは健康に良いわけがない。実際、タバコからはダイオキシンが発生している。ダイオキシンというのは、250~750℃までの不完全燃焼している状態で発生する地球上で最も有毒な化学物質の一つだ。発ガン性があるのはもちろん、女性なら子宮内膜症、男性なら停留睾丸の直接的な原因となる。子宮内膜症になると、生理痛が激しくなったり、不妊症の原因になったり、もっとおそろしいことには、子宮内膜症の女性が産んだ女のコは20歳を過ぎた頃に母親と同じく子宮内膜症が発症する危険が高くなる。男性の停留睾丸とは、精子の生成能力が著しく低下してしまい、さまざまな病気の引き金になってしまうおそろしい病気だ。タバコの火は約500℃なので、まさにダイオキシンが発生している温度といえる。狭くて、換気の悪いクラブで、タバコの煙がモウモウと立ち込めているところはダイオキシンが蔓延していると言っても過言ではない。
おそらく、千代田区が始めた、歩きタバコ禁止、路上でのタバコの喫煙禁止などの条例は、日本全国に飛び火するだろう。タバコは“百害あって一利なし”だ。実際、僕も以前はヘビースモーカーだったが、18歳の誕生日を境にタバコをやめた(不良中高校生だった僕。もう時効ですよね!)。2,000円を何度も支払うようなことになる前に、健康のために、この際、禁煙を試してみてはいかがだろうか。