第49回
アイドルとクラブシーン Part 3
「東京パフォーマンスドール」のガバの衝撃‼


篠原涼子をはじめ、以前、「DA・YO・NE」で一世を風靡したEAST END+YURIの市井由理ら7人で、1990年に結成された伝説の本格的ダンス・アイドル・グループがある。それが、「東京パフォーマンスドール」だ。
何が伝説なのかといえば、毎週土曜日と日曜日に、ライヴハウス「原宿ルイード」で彼女たちが行っていたライヴ「DANCE SUMMIT」の凄さである。そこはまるで、当時のU.K.のクラブ!…にもかかわらず、フロアのクラウドを狂わせているのはDJではなく、ステージで歌って踊っているアイドルグループ「東京パフォーマンスドール」のメンバーたちだったのである。ユーロビートの帝王であるストック・エイトケン・ウォーターマンの多くの大ヒット曲をはじめ、アース・ウィンド&ファイヤーなどの有名曲を大胆にも、ハウスやテクノにリミックスしたカヴァー曲のオンパレード! 約50分間、MCなしのノンストップ! こんなアイドルのライヴが、それまで、いや、今までも存在しえただろうか。しかも、入場料はなんと1,000円! そして、驚くべきことに、1990年6月から1992年7月まで、「原宿ルイード」でのこの「DANCE SUMMIT」は、なんと延べ217回も行われたのである! その後、日本青年館、渋谷公会堂を経て、1993年8月、遂に日本武道館でのライヴを実現するまでに成長したのである。
ちょうどその時期にリリースされた「東京パフォーマンスドール」の通算6枚目のアルバム「MAKE IT TRUE」には、さらに驚愕の真実が隠されている。全10曲全てノンストップなのも当時としてはあまりにも画期的だったが、このアルバムをプロデュースしているのが、あの小室哲哉だったのである! しかも、trfのデビュー曲「EZ DO DANCE」リリース前の小室哲哉がU.K.でレイヴを体感してきた直後に作られた、彼の超実験的なアルバムである。全曲、エクスペリメントなハウスやテクノのオンパレード! その中でも、「SLASH DANCE」は驚異の一曲! なんと、超高速ハードコア・テクノの上に、スラッシュメタルのバリバリなギターのリフが響き渡る超激ヤバなノリノリ・チューンなのだ! そして、歌っているのは「東京パフォーマンスドール」。この曲は、今、聴いてもほとんど、ガバ!(ガバ=1990年代初頭、アムステルダムのきれいめなハードハウス・シーンに対抗して、ロッテルダムで発展した超高速激ヤバなハードコア・テクノのこと。レーベルとしては「ロッテルダム・レコード」が有名)。過去にも先にも、ガバの曲を歌うアイドルというのは聞いたことがない。おそらく、それは今後もあり得ないだろうと思う。
「東京パフォーマンスドール」のガバの衝撃は、アイドルとクラブシーンの歴史を語る中で、決して忘れてはならない事実だろう。