僕の人生の中で最も重要な位置を占めるアイドル、それは「dream」だ。dreamは、2000年1月1日に「Movin'on」でデビューした、当時16歳の松室麻衣、14歳の長谷部優、同じく14歳の橘佳奈の3人のダンスアイドル。セカンドシングル「Heart on wave」や「Private wars」、「reality」など、J-POPにしては、かなり良質の楽曲を次々とリリースし続けていた。
5枚目のシングルとして発売されたのが、「NIGHT ON FIRE」。そう、あのスーパーユーロビートのパラパラの代名詞的トラックのカバーソングである。当時のパラパラギャルたちからすれば、単なるカバーもので、オリジナルよりは物足りないと感じたであろうが、dreamヴァージョンのプロモーションビデオを一目見たとき、まさにド肝を抜かれたのを、今でも鮮明に覚えている。もう、メチャクチャ、カッコいい! 中学生そこそこの女の子たちのプロモーションビデオとは到底思えないほどのクオリティの高さだった。
その驚きの直後にリリースされたのが、dream初のミニアルバム「EURO“dream”land」。今までリリースされたdreamの楽曲のスーパーユーロビート・ヴァージョンが12曲納められている。100タイトルをゆうに超える、あの驚異のロングリリースを続けるスーパーユーロビート・シリーズの一環だ。発売元であるエイベックスが現在のトランスにシフトする前の、最後に力を入れていた頃のスーパーユーロビートなので、それなりに力が入っていて、エピックトランス直前のワープハウスなどもかなり意識した作りになっている。
dreamはこのまま、スーパーユーロビートのカバーソングを歌うアイドルになってしまうのかなと危惧していたが、除々にその心配はなくなっていった。3人のメンバーの中の最年長である松室麻衣が楽曲の作詞を手掛け始め、その作詞能力が次第に開花の兆しを見せ始めたのである。決して派手ではないが、ジーンと胸を打つその歌詞は、dream独特のダンスリズムの上に乗ると、何ともいえない、何度も聴きたくなる曲となる。ダンストラックが大好きな僕だが、そこに素晴らしい、感動する歌詞が乗っていれば、もう何の申し分もなくなる。「solve」、「Our Time」、「Get Over」などの楽曲を是非、聴いてみてほしい。その感動を十分、納得していただけると思う。さらに、それらのシングルの中には、ヘックス・ヘクターをはじめ、そうそうたる海外大御所DJのリミックスヴァージョンも、1枚に4~5曲収録されている。そんな、素晴らしい作詞能力を持つ松室麻衣は、なんとBoAのデビュー曲「ID;Peace B」の作詞も手掛けていることを補足しておく。
初のオリジナルアルバム「Dear…」、セカンドアルバム「process」と、dreamは単なるアイドルという領域を超え、上等なアーティストとしての道を歩み始めた。と、そのとき、1つのニュースが飛び込んできた。その素晴らしい作詞能力の持ち主、松室麻衣がdreamを卒業することになったのだ。僕は、ショックを隠しきれなかった。2002年6月に行われた卒業ライヴの渋谷「AX」にも足を運び、3人での最後のdreamを目に焼き付けた。松室麻衣の卒業を記念してリリースされたdreamのベストアルバム「eternal dream」は2枚組のアルバムだが、2枚目はなんと20曲のノンストップ・メガミックスCDとなっている。今までリリースされた数々の上質のシングルにカップリングされてきた素晴らしいリミックスヴァージョンの中から厳選した、究極で極上のリミックスCD。この74分のCDで、クラブで相当、盛り上がれるパーティが開けると思っているのだが…!
―続く―