第56回
アイドルとクラブシーン Part 10
僕の中の最高のアイドル…dream その4


僕の人生の中で最も重要な位置を占めるアイドル「dream」。Dreamは2000年1月1日、3人のメンバーで結成された。2002年6月、メンバー1人が卒業、その後、2人になったdreamに、なんと、6人の新メンバーが加わり、合計8人のメンバーによる新生dreamが結成された。それまでのdreamはアイドルというよりは、どちらかというと上質なアーティスト路線で、楽曲もプロモーションビデオも非常にハイクオリティなものだった。しかし、8人になった新生dreamは、歌とダンスに限らず、演劇からお笑いまで何でもこなす、マルチアイドルグループをめざすという方向性を示した。
その新生dreamとしてのデビュー曲が、2003年2月14日にリリースされた。それが、80年代ユーロビートの傑作中の傑作、「MUSIC IS MY THING」だと知ったときは、驚きを隠せなかった。1986年、世界中のディスコでかかりまくった、サマンサ・ジルズが放った名曲を新生dreamが歌って踊ることになったのだ。オリジナルよりも、よりダンサブルに重低音鳴り響くダンストラックに仕上がっていて、とてもかっこいい曲だと感じた。
しかし、驚いたのはそれだけではなかった。真に驚愕したのは、そのプロモーションビデオ(PV)だった。僕は、「スペースシャワーTV」や「Viewsic」(現「MUSIC ON TV」)などの、スカパーやケーブルテレビの音楽専門チャンネルの、あらゆるジャンルのPVをビデオに録ってコレクションしている。その膨大なコレクションの中でも、新生dreamとしてのデビュー曲「MUSIC IS MY THING」のPVは、まさに“あり得ない”ぐらい、衝撃的なPVだった。初めて目にしたときの瞬間を今でもはっきりとおぼえている。正直言って、僕は自宅で座っていたソファから転がり落ちてしまった。それだけ、ド肝を抜かれたPVだったのだ。それまでのdreamのPVは非常にハイクオリティでかっこよく上質だった。他のエイベックスのアーティストに負けないぐらい、いや、それ以上の質の高いPVがほとんどだった。
しかし、「MUSIC IS MY THING」のPVはというと…、なんと、dreamのメンバーが主役の学園コメディだったのだ。しかも、僕が最も驚いたのは、そのドラマ仕立てのPVは、なんと肝心の曲のボリュームが非常に小さく、メンバーのセリフがメインなのである。もう、これは誰が見てもPVではなく、ミニコントドラマという感じ。その全く新しい試みに、僕はdreamの全く新しい大いなる可能性を感じたのである。その内容はというと、教室で自習中、各メンバーが自分の夢(dream)を思い描くというもの。1987年生まれの阿井莉沙はウェイトレス、1987年生まれの阿部絵里恵はメイド、1987年生まれの高本彩はチアガール、1988年生まれの中島麻未は宇宙人(!?) 、1988年生まれの西田静香は看護婦、1985年生まれの橘佳奈は女社長、1986年生まれの長谷部優はスチュワーデス、そして、1987年生まれの山本紗也加は天使(!?)。各メンバーが憧れの職業のコスプレをして登場するのである。
その後、六本木の「ヴェルファーレ」で行われたリリース・パーティで、メンバーがこの衣装で登場して、「MUSIC IS MY THING」を歌って踊っている最中、メンバーの中で最も人気が高い長谷部優のスチュワーデス姿に、ファンが鼻血を出して倒れるというハプニングがあり、翌日、いっせいにマスコミ報道された。僕は今だにこの「MUSIC IS MY THING」以上の衝撃的なPVを知らない。このPVはおそらく、数年先においても、コレクターたちの間で語り継がれるだろうと思う。
―続く―