音楽、ファッション、インテリアなどの文化は、18年周期で新しい波が訪れているという。これが「文化の18年周期説」である。それによると、今年2005年には、歴史上、特筆すべき、文化の新しいムーブメントが発生するという。その新しいムーブメントは今後10年を決定するらしい…。
今から18年前の1987年の春。渋谷の道玄坂にある「プライム」ビルの前に、当時、高校3年生だった若者たちが、毎日、集っていた。彼らは、ポロシャツにジーンズ、スニーカーという、極めてカジュアルなファッションをきめていた。そんなシンプルでカジュアルな格好が、実はその当時、渋谷で最もセンセーショナルで、多くの人たちの目を引いたのである。
1980年代、日本の若者たちの間ではDCブランド(デザイナーズ&キャラクターズ・ブランド)が全盛で、「東京コレクション」に出展している多くの日本人デザイナーによるファッション・ブランドを身にまとっていた。川久保玲によるコム・デ・ギャルソン、山本耀司によるヨージ・ヤマモトなどが、「パリ・コレクション」で衝撃的なデビューを飾って以来、それらのブランドが打ち出したモノトーン&デコラティブというファッション・キーワードを基礎とする日本のファッション・ブランドが数多く誕生してきて、日本中の若者たちは、こぞってDCブランドを買いあさっていた。
街中の若者たちがモノトーンの中、まるで彗星のように現れた、カラフルでカジュアルなファッションを身につけた若者たち。彼らは慶応義塾大学附属高校などに通う、カリスマ性があり、ステイタスのある若者たちだった。彼らのファッションは瞬く間に渋谷のファッション・ショップで受け入れられ、1週間、2週間、1カ月もしないうちに、渋谷の街はそうした、カラフルでシンプルなカジュアル・ファッションの若者たちで溢れかえるようになった。
実は、僕も当時、高校を卒業し、大学1年になる春休みで、当時のことを鮮明に憶えている。毎日毎日、渋谷の街の色が、まるで魔法にかけられたように変化していったのだ。それまで、かっこいいとされていたモノトーン・ファッションが急に色褪せたものとなり、ビビットな赤や青、黄色やピンクのラルフ・ローレンのポロシャツが、まるで宝石のように輝いて見えるようになった。ブルージーンズと白いリーボックのスニーカーがまるで天使のように見え始めたのだ。高価なDCブランドと違って、安価なそのカジュアル・ファッションはアッという間に渋谷全体をジャックした。
それらのファッションは、いつの間にか、アメカジ(アメリカン・カジュアル)と呼ばれるようになり、それに、シルバー・アクセサリーやターコイズなどのネイティヴ・アメリカンのアイテムが加えられるようになると、それは、渋カジ(渋谷カジュアル)に進化した。その渋カジが、現在まで脈々と続く、ストリート・カジュアルの原点なのである。渋カジから古着文化が発展し、渋カジの殿堂「プロペラ」が“裏原”と“キャット・ストリート”を生んだ。
1987年というのは、日本のファッションの歴史において、ストリート・カジュアルが生まれた記念すべき年なのである。そのストリート・カジュアルの文化が、音楽やライフスタイルといった、その後の日本の全ての文化を変えていったのである。
あれから18年、今や街中の若者たちのファッションは1980年代そのものだ。DCブランドが、ディオールやプラダなどの本物のブランドに変わり、街はモノトーン&デザインなファッションで溢れかえっている。1987年から18年後の2005年の今年、カラフルでシンプルなファッション革命がどこかで発生し、それがストリートで大きなムーブメントとして発達し、これからの新しい文化を創り出していくかもしれない!!