音楽、ファッション、インテリアなどの文化のサイクルは、18年周期で繰り返しているという。これが「文化の18年周期説」である。それによると、今年2005年には、歴史上、特筆すべき、文化の新しいムーブメントが発生するという。その新しいムーブメントは今後10年を決定するらしい…。
今から18年前の1987年。その年、日本の音楽史上、最も重要な位置を占める一つのロックバンドが解散した。そのバンドの名は、BOOWY。氷室京介、布袋寅泰などのメンバーで構成されたBOOWYは、日本のロック史上、伝説的なカリスマ・バンドである。近年、トリロジーCDやDVDなどが次々とリリースされており、現代の若者たちにも再注目されている。
80年代、日本のロックバンドの代名詞といえば、忌野清志郎率いるRCサクセションだった。清志郎は、坂本龍一と「いけないルージュマジック」という曲でデュエットしたりと、型破りな、まさに存在自体が“ロック”な存在だった。当時、日本のロックブームを提示していた雑誌「宝島」も、“バンドやろうぜ!!”というキャッチコピーを大流行させており、清志郎を目指して、多くの若者たちがギターを手にしていた。
そんな中、まるで彗星のように現れたのが、BOOWYだった。もともとは、宇都宮のライヴハウスで活動するローカルなパンクバンドだったが、その存在はひときわ輝いていた。まず、ヴォーカルの氷室京介の日本人離れした、パーフェクトなルックス、190cm近い身長のギターの布袋寅泰のその圧倒的な存在感。そして、反骨精神剥き出しのパンクロックの中にあって、鮮明に残る美しいメロディーライン。BOOWYのどれをとってみても、その全てが、カリスマになるべくして生まれたロックバンドだった。ライヴハウス時代から、音楽業界でも超話題だったBOOWY。音楽通の間では、最高級の評判が出回り、メジャーデビューと同時に日本中がBOOWYフィーバーに沸いた。
それから、たった1、2年、1987年、BOOWY、突然の解散…。まるで、日本国民全員が喪に付したような静寂がおそった。僕の心の中も、ぽっかりと穴が開いたような感覚におそわれたのを、今でもはっきりと憶えている。これから、何に夢中になって生きていけばよいのだろう。みんながそう思っていた矢先、日本のロック界に目を向けると、最上級の多くのロックバンドが成熟していた。X-JAPAN、ザ・ブルーハーツ(現ザ・ハイロウズ)、BUCK-TICK、バービーボーイズ、爆風スランプ、レッド・ウォリアーズ、ZIGGYなどなど…。まるで、BOOWYの亡霊を追いかけるように、日本中が次々とお目当てのロックバンドを見つけ、そして、はまっていった。日本中がまさにロック・ムーブメントに巻き込まれていたのだ。
そんな中、1988年、TBSの深夜枠で、「イカ天」(イカすバンド天国)が始まった。三宅祐二が司会をつとめるその番組は、素人のロックバンドが毎週約20組登場し、音楽評論家たちの点数によってメジャー・デビューできるということが話題となり、伝説的な超人気番組となった。その番組の中から、フライング・キッズ、ブランキー・ジェット・シティ、マルコシアス・バンプ、そして、見事、オリコンランキング1位に輝いた超話題曲「さよなら人類」を大ヒットさせた、たまなどがメジャーデビューした。
1987年にBOOWYが突然の解散をしたことによって、BOOWYが築いたロックスピリットが日本中に拡散した結果となったのだ。
あれから18年、今や日本の音楽は、ロックが完全にメインストリームとなっている。90年代、日本のロックは低迷期を過ごしてきたが、ここ数年、再び、ギターを手にした若者たちが急増している。もし、今年、BOOWY級のロックバンドが突然、解散したとしたら、そのバンドのファンは、他のバンドのファンにならざるを得なく、そうして、ロックスピリットの拡散が行われるのだろう。