音楽、ファッション、インテリアなどの文化のサイクルは、18年周期で繰り返しているという。これが「文化の18年周期説」である。それによると、今年2005年には、歴史上、特筆すべき、文化の新しいムーブメントが発生するという。その新しいムーブメントは今後10年を決定するらしい。18年前の1987年を知れば、今年を知ることができる…。
今から18年前の1987年。その年、コンパクトディスク(CD)が爆発的に世の中に拡まった。それまで、音楽を聴くとは、レコード、もしくはテープを再生することを、そう呼んでいた。しかし、1987年を境に、新たにCDもその仲間入りを果たしたのだ。CDは、日本では1982年に、ソニーが松田聖子やポール・モーリアなどの人気レコードを初めてCDとして発売。しかし、当時はまだまだ一部のオーディオマニアにしか受け入れられなかった。何といっても、CDプレイヤーの値段が高かったのである。23年も前に10万円以上はしたCDプレイヤー。ふつうの人がそれを購入するはずがなかった。
しかし、名前のように、コンパクトで扱いやすく、音の劣化もほとんどないCDは、除々に普及していった。やはり、レコード盤はあくまで“生もの”であり、キズがついたり、高温に弱かったり、曲がってしまったり、割れてしまったり、そして、何回も聴いているとすり減ってしまうという決定的な弱さがあった。しかし、CDはその全てを克服していたのである。しかも、自分の好きな曲だけをリモコンのボタン1つで選曲することができる。長年、レコードのみを聴いてきた当時の人たちにとって、CDは一度使ったらやめられない“夢の道具”だったのである。
それまで、CDプレイヤーはオーディオ機器として単体でしか発売されていなかったが、1987年、オーディオコンポにCDを搭載する機種が続々と発売になった。ちょうど、1987年に高校を卒業し、大学生になった僕だが、その年の春、大学の入学祝いに、友達の実に多くが、CD付きのオーディオコンポを買ってもらっていたのを、今でも鮮明におぼえている。
その年の春に僕の、音楽を取り巻く環境が一変した。CDが一気にその主役に躍り出たのである。それと同時に、“貸しレコード店”にも、CDが並ぶようになった。レンタル店にとっても、キズがつきやすく、劣化しやすいデリケートなレコードに比べ、CDはあまりにも扱いやすい商品だったのだろう。店内において、CDが占める割合が、この年、急速に拡大していったのをおぼえている。
18年前の1987年、そして今年と同様、9年前の1996年も、新しいムーブメントが生まれる特別な年だった。ちなみに、その年はMDが爆発的に普及した年だった。そして、2005年の今年、爆発的な勢いで拡散しているのが、iPodをはじめとしたデジタルオーディオプレイヤーである。アップルのiPodを追いかけるように、ソニーや東芝なども参戦し、確固たる市場が形成された。
さらに、拍車をかけること必至なのが、「iTunes MUSIC STORE」のオープンである。コンピュータ上で、iPodに音楽を移行させるためのソフト「iTunes」上で曲をダウンロードして購入できるシステム。アメリカでは、2003年4月のオープン以来、なんと5億曲がダウンロードされている。1曲99セント(約101円)という手軽さが好評の要因だ。今年を境に音楽の聴き方が確実に変化するだろう。
18年前、レコードしかなかった時代にCDが普及したように、今年を境に、音楽はデータとして扱い、デジタル・ミュージック・プレイヤーで楽しむようになるのは確実だろう。まさに、「文化の18年周期説」に裏付けられるように、今年、新しいムーブメントが発生したのである!